疲れの滲んだ顔と足を、だましだまし彷徨っていた。
喧騒のやまないこの大都会で彷徨うこと数時間。なんの当てもなく、足の向くままにふらふらと入っていった路地にその店はあった。
何かに引っ張られるように入店し、陳列された商品を物色。思考力が著しく低下した頭が言う。
「おつかれ。これ良いよね。今のお前にピッタリじゃない?」
これが?
商品は疲労困憊、加えて正常な判断力を失った今の俺には十分すぎるほどに魅力的に見えた。
「ほら、これ使ってみ。」
また声がする。
「疲れてんだろ?誰も見てないって。」
本当に?誰も見てない?
「これ本当にすごいから。」
いいのかな?こんなの使ってしまったら他のものが使えなくなったりしないか?いいものを知ってしまうと他のものでは満足ができなってしまう。人間とはそういものだ。だから先人はより良いものを求め、日本を引っ張ってきた。
が、今の俺にそんなことはどうでもよかった。日本が何だコノヤロー。
「さ、今日はお前すごい頑張ったよ。」
俺?頑張った?そうか。そうだよな。
俺は何か見えない力につき動かされるように歩み寄る。あたりを見回す、ゴクリと喉がなる。店員からも死角になったここには今客もいない。
やるなら今しかない。靴を脱ぐ、身を乗り出す。意識を手放す。
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